2016.12.29管理費削減の誤解

2000年代半ば頃、様々なメディアで「管理費削減」に関する情報が数多く掲載されていました。管理組合の運営には欠かせない管理費ですが、一個人としては支払う金額が少ないに越したことはありませんから、このキーワードに関しては多くの方が注目していました。

ですが、かつてメディアを賑わせたこの情報は、実はそのまま鵜呑みにはできないものも少なくありませんでした。今回はそうした「ちょっと怪しい情報」について紹介していきます。

グレードダウンにつながる「スリム化」「見直し」の罠

管理費削減の論拠として「管理会社に業務内容のスリム化を求めて値下げを実現させた」「業務を見直すことで2〜3割ほど管理費を削減した例が多い」というものがありました。

「スリム化」「見直し」とは、例えば、毎日行っていたマンションの清掃を週に2、3日に減らすというようなものです。当然、その分清掃員の人件費が減りますので、管理費の削減につながります。ですが、これは単に仕事量を減らしただけであり、その分、マンション内の汚れは目立つようになります。つまり、マンションの資産価値が下がる遠因になるのです。

過剰なサービスや不要な業務は見直すことがもちろん大切ですが、必要なものをカットすることで、一時的に「管理費が下がった」と喜んでいると、後々の大きな後悔につながってしまうことにもなるのです。

管理員を住み込みから通勤に変更すると委託費が半減する?

「管理員が住み込みで常駐しているマンションで、通勤に変更したところ委託費が半減した」という事例もありました。ですが、複数の管理会社に確認したところ、半減などということはあり得ないという意見でした。

住み込みであっても、通勤勤務であっても、管理員の労働時間は週40時間というものが原則的です。住み込みは住居を提供している、つまり住宅手当を支払っているので、その分管理員の給与設定は低く設定されます。それを通勤にすると、その分給与を増額する必要がありますし、さらに交通費も支給しなくてはなりません。トータルで考えると、住み込みであっても通勤であっても、委託費は「ほぼ同じ」になるはずなのです。

表面的な見積もりに踊らされた末のグレードダウン

「大手の管理会社から中小の管理会社に委託先を変更したことで、年間の管理費が大幅に削減できた」ということも、かつてメディアではまことしやかにささやかれていました。

一般的に、大手であればあるほど費用は高くつきます。しかしその分、施設やスタッフのレベルは高く、教育も行き届いています。一方で中小の管理会社の場合、スタッフや施設等のレベルは下がることになるので、当然、費用は割安になります。「多少高いお金を払ってでも大手にすべき」と言いたいのではありません。中小でもしっかりとした管理会社も当然ありますし、その逆もあります。会社の知名度や体制を優先するか、価格を優先するかは管理組合の選択次第です。

ただし、知っておかなくてはならないのは、普通、従前より高い見積もりを出す営業マンはいないということです。一時的に安い見積もりを提出してきても、その裏には修繕工事で割高な見積もりを提出して元を取ろうと考えていたり、管理のグレードを下げることで対応しようと考えていたりする企業もあるのです。

実際に中小の管理会社に変更して一時的に管理費が下がったことで喜んでいたものの、実際には大幅なグレードダウンにつながってしまったというケースも多々あります。

簡単に値下げに応じるのは「最初の見積もりが甘い」から

「管理会社に交渉をしたら値下げに応じてくれた」という事例もありました。しかしそれは、単に「適正な金額に戻っただけ」という場合がほとんどです。特にゼネコンやデベロッパー系列の管理会社の場合、分譲当初の管理費の見積もりがいい加減なことがよくあるのです。ひどい場合には、何も考えずに下請け企業の見積もりに上乗せしているだけの会社もあります。

「管理会社を介さずに業者と契約を結ぶことで減額」が後の混乱につながることも

「機械式駐車場の保守費用は管理会社の言い値で決まることが多く、削減余地は大きい」「設備点検や補修などは管理会社が専門の業者に再委託しているため、管理会社の言い値で決まる」という考えから、「管理会社に丸投げせず、それぞれの業者に組合が直接、委託するほうが望ましい」と結論付ける記事も多くありました。

管理会社を介さずに下請け業者と直接契約することで管理費を見直そうというのは、管理費について考えるときに誰もが思いつくことです。たしかに、それができれば管理会社の手数料は発生しませんし、一見、有効なものにも思えます。

ですが、多くのマンション管理組合の構成員は、その活動だけに専念しているわけではなく、本業の仕事があれば、家庭もあります。そうした忙しい日々の中で、しっかりとイニシアティブを取って業者と連携することはハードルが高いものです。目先の金額だけを追って管理会社を排除したことで、マンション管理が行き届かなくなったり、大規模修繕の際に苦労したりというケースも多々あります。

管理会社を変える、もしくは排除して管理費が下がっても、将来的にも組合の活動が機能しなければ、後に余計な出費を余儀なくされる可能性は十分にあります。

管理サービスの内容を決めるのは管理組合

管理組合として管理会社に何を頼みたいのか。決めるのは管理組合自身です。管理会社が管理サービスの内容決めて、勝手に押し付けているように思われがちですが、管理組合が業務を発注してそれを管理会社が受託するという契約関係なのです。

管理費について考えるとき、管理組合と管理会社の関係、そしてどのようなサービスを求めているのか、自分たちのニーズと実情をしっかりと考慮していくことが重要になるでしょう。

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